lost child
帰り道。広志と別れた後に一樹は近くの公園に寄る。
そして滑り台のてっぺん。ランドセルを下に投げつけた。
「なんなんだよ……」
過去に戻れて、何があるんだ。
やっぱ夢なのか?
長い現実のような夢だ。
寿司屋の声は幻聴か。
そうか、俺寿司屋の黄金の皿に涎たらして気を失って……うん、それでいいや。
「なわけないじゃん」
ツン、と背中に誰かの指があたった。
「ひ、ぎぁあ!」
一樹はあまりの驚きに滑り台から落ちかけた。
「はっろーぅ。朝はお返事できなくてごっめん。
どう? 子供に戻れた感想」
滑り台の階段に立っていた、男の子。
グレイなのか青なのかよくわからない髪が肩まである。
アメジストの瞳からして、外国人かな?
服装はそれこそ黒い着物なのだけれども。
「……誰?」
一樹はひっそりとした声で聞いた。
「声声!! なにさ、君が呼んだんでしょ?」
男の子が足をじたばたさせる。ぼろい滑り台が少し揺れた。
「……お前か!」
一樹は思い出して目を見開いた。
寿司屋の……例の声の男の子だ。
「君がね、面白そうだったから」
男の子がポツンと呟くように言った。
「何が?」
「君を此処に戻してあげた理由」
「……俺の人生って面白いのか? あんまり…普通だと思うけど」
そう、いたって普通。
両親がギャンブルに走って友達に借金の連帯保証人にされたり、
ヤクザに指つめられたり…宝くじであたっていっきに億万長者。
そんな人生にたまにあこがれた普通の人だ、俺は。
「それが面白いんだよ。わからない?
普通っていうのは人間の偏見。
僕は逆に異常って言われる人の人生ばっかり見てきたから。飽きたよ」
「見てきた……って?」
一樹はその男の子の目を見た。
「……いや、別に」
男の子は滑り台からするりと降りた。
「名前はシェルア。一応神様みたいなもんだけど拝まないでね」
「神様……ねぇ」
一樹はポカン、と口をあける。
「うん。神様っぽいだけだけど……あ、ちなみに僕女の子だよ?」
「は?」
「嘘だけど。性別はないの」
「何なんだよ……」
詰まらない会話ばかり。
一樹はふと綾子の事を思い出した。
「そ、そういえばっ。元に戻してくれるのか!? 」
一樹はシェルアの肩をつかんだ。
「はい?何を?」
シェルアはぽかん、とした顔をする。
「時間だよっ。タイムスリップしてそのまんまなんて……! 」
「ああ。忘れてたね」
シェルアはニコリと笑うと、「またね」と言って指をパチンと鳴らした。
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