lost child
「じゃあ今日は……算数の教科書32ページ開いてー」
ああ。匂いも景色も懐かしい……。
小学五年生。
一年のうち半年近く……何故か廊下側の後ろから二番目の席だった。
給食当番はおぼん係り以外やらなくて、 係りを決める時は絶対広志と一緒。
「おい、帰りにあの細い道の方通ろうぜ」
「えー、無理無理。だってあそこ柿臭いし」
「それより駄菓子屋でお菓子もらったほうがいいって」
左耳を通過する小話。
知ってる知ってる、あそこの道は柿みたいな変な匂いがするんだ。
駄菓子屋のおじいちゃんは帰り道に寄るとよくするめをくれたっけ。
「一樹、俺らは今日真っ直ぐ帰るぞ! 虫とりだからな!」
広志が一樹に呼びかける。
「え、あ……うん?」
一樹は少し戸惑いながら返事をした。
「いてっ」
頭に強い衝撃が走った。まぁそれほどでもないが。
「あっ、ごめん! あたると思わなかった」
少し笑いをこらえながらスタスタと一樹の近くへ寄り、一樹の頭に強い衝撃をあたえた給食袋を拾う。
「や……山田?」
一樹はまたキョトン顔。
「ん? 何? 山田ですけど?」
給食袋をまたどこかへ投げる少女。
「山田……えっと山田咲?」
「え……ああ、そうだけど、フルネームで呼ばれるとてれるじゃん。
どうかしたのー?」
咲は投げ返された給食袋をキャッチする。
「どうも……しないっちゃあしない」
「何それ!」
クスクスと笑いながら、山田咲は自分の席へ駆け寄った。
一樹はボーッとしていた。
まさか、まさか山田とまた会えるなんて!
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